AUTO JAM

Guitar Craft
MODEL-Kurogane

I began to make a guitar for Biel who great guitarist from Spain.

そのボディは2015年に完成しました。
これはフレンドであるスペインのプロギタリスト、Bielの為に作ったギターです。
ギターと言いましたが、そのボディだけを作りました。
その訳と、彼と知り合った当時のいきさつをお話しします。

私の作品J2が完成した頃、海外からも時折りメールが届くようになりました。
同じようにスペインのBielからも、私のギターを売って欲しいという趣旨のメールが届きました。

元より私は、音の追及の為に自分用のギターを作り始めました。
今では現行グレッチは作りも音もビンテージスペックになったと思いますが、当時所有した93年型は ビンテージとは大きく違う音を持ったギターでした。
59年のビンテージを所有してもなお私の欲求は止まらず、取り扱いの気楽な新しいギターでビンテージに近い音のする ギターを作ってみようと思ったのが、すべてのきっかけです。

Bielには、私のギターは誰にも売るつもりの無い事を伝えましたが、彼は食い下がりもし私の気が変わったら連絡して欲しいと言いました。
こんなプロでもないシロウトの私の追及途中の作品で、しかもどんな音がするかもわからないのに、ずいぶんと熱のある人だな。 と困惑した記憶があります。
その返事に私は無謀にも、「もし私の気が変わったとしても、このギターJ2はブライアンセッツァーにあげたい」と 夢のような話をしました。
その時点では、彼との英会話に少し楽しみを感じていたせいもあり、ぶしつけな返答ではなく、自分の思い入れを 翻訳に苦労しながら説明をしたと思います。


それからというものの、彼は海外の大きなサイトGretsch Pageで私のWebの宣伝をしてくれたり、 ブライアンがwebを観てくれたらとの願いで、フォーラムに書き込みをしてくれたりと熱心に応援を してくれました。
英語や手法に弱い日本人を理解しているBielの人の良さに私はとても感激しました。
見ず知らずの言葉も伝わりにくい海外の人にそのような振る舞いを受け、私はなんとかそれに答えようと考えるように なっていましたがただ、人の為にギターを作るなんてとてもストレスのかかるという事を作ってみて実感しましたから、 容易に決断する事はできません。

彼とは時々メールのやり取りが続き、次の作品"J3 ドラゴンインレイ"が完成し、そのJ3を奇跡のタイミングで ブライアンの来日ライブ2014の際に手渡す事ができた後、大きな夢の達成に安堵と虚脱感の中にいました。

私自身はブライアンにギターをプレゼントできた事が最大の喜びであって、その後の「何か」を期待する気はありませんでしたが、 ビエルやフランスのプリッシーから、「その後ブライアンから何か連絡は来たのか?」とか、「公式サイトに 記事がなぜ載らないんだ?」とか、当の本人以上に気にもまれあくまでニセモノのグレッチでは公表の自粛も やむを得ないだろうし、夢は終結して次の作品J4を手がけていましたので、もうそっとして置いて欲しいと言う気持ちがありました。 (のちのブライアンのマネージャーからのメールにて、J3を見た本家グレッチ関係者もJ3を気に入っているとの事で、著作権うんぬんは無罪放免のようでほっとしました。)

ビエルはその後、(私に)何も礼が無いのはアンフェアだろうとブライアンのマネージャーに連絡を取り付け、私に 「そのうちブライアンから何かが届くよ」って、したり顔(メール)をくれたのでした。
それがあのFBにアップした、ブライアンから届いたアナログレコードの贈り物だったのです。
J3はなんと5月に手渡した後、どういう訳か10月にようやくブライアンのもとに届いたらしかったのです。輸出に 問題があったのでしょうか。

つくづく本当にビエルはイイやつだなと驚かされました。
そうして私は感謝を形にしていよいよビエルにギターを作ろうという気になった訳です。

私の中ではグレッチタイプの構造の追及は終わって満足しましたし、同じ物を繰り返し行なう事がもっともキライな性分の 私は、自由な装飾ができる自作ギターの追及に目線が変わっていたこともあり、彼の欲している"日本人による日本のデザイン"の 手が入ったギターについて自己の挑戦のつもりで表現してみたいと思いました。

私はイヤというほどネックの重要性を理解していますのでネックはプロによる作成がいいと判断して、ボディとヘッド のつき板デザインだけを作る約束を彼に承諾してもらいました。
ボディだけ作るのならば、素材的な感覚で作る事でストレスが減らせるだろうという気持ちもありました。
ボディの素材はブライアンにプレゼントしたJ3と同じですが、今回はディープボディです。(J3はミディアムボディ)

それからどれだけ経ったでしょう。
2015年にボディは完成しそれから翌年、ヘッドのつき板が完成してようやく彼の元に送る事ができました。
そして2019年ついに! 彼の友人のルシアーがネックと仕上げを行い完成をみたので、ここにアップします。



MODEL-Kurogane

ボディのFホール形状は彼の希望により、J1のものを少しアップデートして取り入れます。Fホールはまだ加工途中です。

おなじみの構造です。
完成したメイプル合板ライニングを眺めていると、やはりグレッチはドラムメーカー発祥だなと納得しますね。
完成したボディ。懐かしのJ1とのショット
Fホール形状はアップデートして、すっきりしたと思います。
このFホールデザインと、後に出てくる ヘッドのデザインと調和してくれるとうれしいですね。
懐かしのJ1、J2とのショット
ボディへの装飾は、彼のラストネームと家紋である"弓の戦士"をモチーフに、大きなインレイをと考えていましたが、 私が生きているうちに完成しないかもしれない不安と、とかくデザインがヨーロッパ調になってしまうなど、 いろんな思案の末、結局ワンポイントにしました。

フリーハンドでのエボニー切り出し。
It had been considered a big inlay with his last name and a family crest motif the "warrior of the bow" on backside. However, it was decided for a little one point because I felt that "Greatly showy inlay" is a common design.
バックに埋め込む溝を掘り、インレイパーツも完成。

日本なりの弓のモチーフと、イベントにおいてお客様が沢山来てくれることに対する"大入"の文字もシャレで いいかなと、自己満足しております。
インレイ素材はパール、あわび、アバロンほか、ご想像にお任せします。
Now this is Japanese traditional design!
Meaning of the words "大入(Oh-Iri)" is a lot of visitors coming in an event.
like "full house", "be full to the doors"
I'm sure itis the best design as his motif in japanese eyes.
的矢というデザインです。日本古来の文様で、縁起物である。
このデザインだけは、彼に報告せず内緒で入れましたので、彼の元に到着して気に入ってもらえるといいなと 思っています。
It's a design called Mato-Ya.An ancient Japanese pattern, it is a Lucky charm.
I kept this design a secret from him, I hope that he like it.
なにより、"生みの苦しみ"に苦しめられたのは、ヘッドつき板の装飾です。
作成期間のほとんどが、デザイン案の思案で過ぎました。
彼の希望通り、日本らしさを取り入れたデザインを施しました。
この歌舞伎顔は、Bielが好きだと言っていた日本のアニメ"マジンガーZ " を思い出して、その要素を 取り入れてデザインしました。
そのはずでしたが、うっかり老化は怖い。デビルマンと混同していました。。。
As his requested, I made a peghead overlay veneer with the Japanese traditional design included.

The decoration of the peghead design was "labor pains".
The most of the making period went too far for thought of this head design plan.

I adopted a factor of Japanese animated cartoon " Mazinger Z " which Biel liked ;)
It was the intention, but the aging is scary carelessly.
I confused it with a "devil man"...
まずは、黒色パテを埋めてと。
なかなか黒色で細かな模様を持つ素材って無いんですよね。
マイカルタの繊維模様はどうかなと購入してみましたが、加工の難易度に断念。
赤色を埋めるミゾを彫り。
赤色パテを埋め。
隈取(くまどり)と呼ばれる歌舞伎の化粧顔の完成です。

シーラーと塗装が乗れば、今はピンクに見える部分も発色の良い赤になると思います。
It's the makeup face of Kabuki called Kumadori.
I designed it by an original.
歌舞伎の顔を描いてみると、見覚えのある漢字のような配置になりましたので、トップに入れる文字はフレイムスボディ のギターである事に関連のある"炎"を思いつき、彼も同意の事で決定しました。
It seems the face of Kabuki for placement such as "炎(flames)" of the kanji.
Including the meaning called the guitar made by frames Maple, I thought that a letter of "炎" is most suitable.
炎のインレイは、日本製を意識して、あわび貝を採用です。
久々の細かい作業、ますます進む老眼、ちとキツイ。
The inlay of the " 炎" made by Japanese abalone.
全体に軽くサンディングシーラーを載せて完成です。
パテに混ぜた銀粉もアクセントになってくれたようです。
ビエル、気に入ってくれるかな。。。
ヘッドにつき板を貼る前に施工しましたから、貼り付け後にヘッドの厚み調整で表面を多く研磨されてしまうと、 「ヘイ! 研磨しすぎて顔のデザインが変わっちゃったよ!ゴメン!」なんてのは無しにして欲しいです。

ベースの色は何色にするんだろう。
The body is completed in 2015.
A head plate is completed in 2016 and finally I sent it to him at March.
I pray for its becoming the good one that his friend completes remaining work.
2019年7月、ついに彼は組付け完成したKuroganeを披露してくれました。
オレンジの調色がすばらしい。
60年代のフレイムメイプルの個体に多い、少し薄い色付けがされたような本物感があると思います。
Finally, in July 2019, he showed off the assembled and finished Kurogane. The orange toning is great. I think that there is a real feeling that is a little lightly colored, which is often found in 60's flame maple individuals.
いくつかの候補から自分で選んだこの柄は、着色によって想像を超える仕上がりになったと確信しました。
ワンピースのフレイムメイプルはビンテージ6120と並べても遜色のないルックスになっていますね。
I was convinced that this pattern, which I chose from a few candidates, was finished by coloring beyond the imagination.
The one-piece flame maple looks comparable to vintage 6120.
見てください、左上の部分のフレイム杢を!
私はこれを眺めている時間が至福の時です。 ピックアップベゼルやピックガードの装飾によっても違う表情を予想する楽しみもありますね。
Please take a look, Flames in the upper left part! The time I am looking at this is bliss. There is also the pleasure of predicting different expressions depending on the decoration of the pickup bezel and the pick guard.
オレンジのバックグラウンドに配色がマッチしていて安心しました。
彼の友人のすばらしい技に拍手です。
I was relieved that the color scheme matched the orange background.
I applaud his friend's great skill.
ネック裏の粗いフレイムスがとても魅力的です。
The coarse flames behind the neck are very attractive.
控えめなワンポイントですが、これぞ"ザ・ジャパン"と言えるでしょう。
ビエルが私に終始言っていた言葉。「日本人としてのあなたの感性のまま、表現してくれたらいい。」
とかく派手になりがちな装飾をシンプルに抑える事もまた思慮のいるものです。
(この表現がうまく翻訳されているとうれしいです。)
It is a modest one point, but it can be said that it is "The Japan". The word Biel was telling me from time to time. "I would like to express it with your sensibility as a Japanese." It is also thoughtful to keep the decoration that tends to be extravagant simple. (I'm glad that this expression is well translated.)


あとがきAfterword


私は明確に覚えている。
ある日、わたしのギターについてのメールが来た事。当然、趣味でギターを作っている私にはギターの販売など恐れおおい事なので、話を断った。しかし彼はあきらめなかったんです。
彼の分かり易く親しみのある文章は、英語の苦手な私もつい何度か会話を楽しめました。
そこから彼との友好は始まり、その後私にとって忘れ得ぬ思い出をもたらしてくれました。
ご存じのように、私にブライアンセッツァーのマネージャーからの連絡があったのは彼の所業である。
そこで私は彼に感謝を形にすることを決めました。
"餅は餅屋(Better leave it to a specialist )"
ネックの製作は彼に任せて、私はギターのボディだけの提供とさせてもらいました。
数年後、彼が名付けた黒鉄(Kurogane)は完成した!
彼のすばらしい友人は見事なギターに仕上げてくれました。

海外の人との連携でこのような身に余る豊かな経験ができたこと。
彼とのフレンドシップを名誉に思う。乾杯!

I remember clearly.
One day, an email about my guitar came. Naturally, I was making a guitar for my hobbies, so I was afraid of selling guitars, so I refused. But he did not give up.
His easy-to-understand writings made me enjoyable conversations several times, as I am not good at English.
From that point on, friendship with him began and brought me unforgettable memories. As you know, it was his job that I had a contact from Brian Setzer's manager.
So I made him thankful.
But,"Better leaves it to a specialist"
I left him to make the neck, and I gave it only to the body of the guitar.
A few years later, he named the Kurogane he finished!
His great friend finished off with a great guitar.

Having experienced such a rich experience in cooperation with people from overseas.
I honor my friendship with him. cheers!

そんなBielのロカビリーアルバムはこちら!
I would recommend that you guys hear this tune! Check this out!
Biel's Bop Ignition



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